リ・サンボン氏によれば、大城山一帯がゆるやかな丘陵地帯ということもあり、全体的に工場が少なく空気が澄んでいるという。加えて松の低木やアカシアの木などが植えられた豊かな緑があり、党幹部や軍の将校向けのアパートが多いのだそうだ。道もきれいに整っており、前回で紹介した庶民の暮らす寺洞(サドン)区域よりも環境整備が進んでいるという。
リ・ソンヒが撮影したのは金日成総合大学から西に少し行ったところにある大城市場だ。時間帯は午前一〇時の市場の開場前後。慌ただしく市場を訪れる人々の忙しそうな様子や、商売に余念がない女性たちの姿が見て取れる。
注1 北朝鮮の中央統計局が二〇〇八年一〇月に実施した人口調査に拠る。一九九三年以降一五年ぶりに行われたこの調査は、国連人口基金(UNFPA)の基準にのっとって行われた、いわば北朝鮮初の国際水準の人口調査だ。三万五千人の調査員による家庭訪問(その費用の七割を韓国が負担)により導き出された調査結果は二〇一〇年国連により公開された。しかし、九〇年代後半の「苦難の行軍」期に、最低でも一〇〇万人以上が死亡したとされるにも関わらず、人口が二四〇五万人と、一九九三年当時より二八四万人も増えたとしており、その調査結果には信憑性に欠ける部分があると言わざるを得ない。人口数値はあくまで「参考値」と考えられたい。
◆市場周辺の風景
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