「主体思想派」が党内に浸透し「従北」路線へ
民労党は最初から「従北」ではなかった。反米色は強かったものの諸外国の社民政党と大きく変わるところはなかった。様相が変わるのは、「主体思想派」(チュサ派)が入り込んでからである。「チュサ派」とは80年代後半に金日成主義に密かに帰依した地下グループのことで、韓国で主体思想を流布して革命を起こし北朝鮮主導の統一を目指す。
90年代になって韓国の民主化が進み、金大中政権の対北朝鮮融和政策の下で活動範囲が広がると、「チュサ派」は、地上に首を出して公然化した。労組中心に結成された民労党にも大挙入り込み実権を握ったのである。
80年代「チュサ派」運動のリーダーの一人で、現在は北朝鮮民主化団体の「NKネット」代表の韓基弘(ハンギホン)氏は次のように言う。
「民労党党員の大部分は『チュサ派』ではないが、中枢に北朝鮮と直接結びついた少数の確信犯が巣食っているのは間違いないだろう。彼らが平壌の指令で『従北』路線を守っている」
金正恩世襲後継を是認する民労党
北朝鮮では昨年9月 金正恩氏が公式デビューし、前代未聞の三代世襲後継に突き進むことになった。
韓国の進歩派の大半が、この世襲後継を厳しく批判する中、民労党だけは「北の問題は北が決めること」という立場を取ったため、進歩系の「京郷新聞」から「三代世襲後継を認めるつもりか」と批判されるなど、進歩陣営から強い反発が表明された。
その余波に加え、冒頭で触れた「旺載山」事件が発生。世論は民労党に厳しい視線を送るようになった。
来年、韓国は総選挙と大統領選がある。ハンナラ党からの政権奪取のため、野党各党派は協力を進める動きを活発化させている。
総選挙での左派の議席増を狙って進歩新党と民労党の再統合を目指す動きも始まっていた。
9月4日、民労党への合流を決める進歩新党の党大会が開かれたが、結果は否決。「従北」民労党とは一緒にらやれないという結論だった。
「従北」は韓国進歩派の発展に大きな障害になっている。