「つくる会」系教科書採択めぐり揺れる国境の島
~沖縄・八重山「公民」採択問題~(2)

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日本の最南端、沖縄・八重山諸島が「教科書問題」で揺れている。
2012年度から4年間、中学校で使われる教科書がこの夏、全国で採択されたが、八重山地区(石垣市、竹富町、与那国町)の公民教科書だけが期限を過ぎても確定しない。
子どもたちの未来を育むはずの教科書が、政治的な思惑に翻弄されている。国境の島から報告する。
栗原佳子(新聞うずみ火)
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育鵬社版公民の市販本。授業で使われるものと同様、表紙の日本地図には、沖縄が除外されている。

《育鵬社は逆転不採決》
8月26日、石垣市・与那国町教委は答申通り育鵬社版を採択。
しかし、竹富町教委は翌27日、答申のあった育鵬社版を否決、東京書籍版を選んだ。

採択の権限を持つのは教育委員会。ただ、同一地区内では同じ教科書を選ぶことになっている。
このため8月31日、沖縄県教委の指導助言のもと協議会の役員会で再協議が行われた。
しかし決裂。このため八重山地区の全教育委員13人で構成する「八重山教育委員協会」(会長=仲本英立・石垣市教育委員長)が9月8日、異例の臨時総会を開催。

県教委のオブザーバーのもと多数決で東京書籍版を採択した。育鵬社版は土壇場で逆転不採択となったのだ。

《保守市政に転じて》
多数決まで費やした時間は8時間。育鵬社版を推す与那国町の教育長はボイコット、玉津氏は一時退席した。
現場で一部始終を見た潮平正道さん(石垣市)は「2人の教育長の話のあまりの次元の低さに呆れましたよ」と苦笑し、そして真顔になった。

「でも、僕はこういうことが起こるたびに思うんです。自分たちの伝える力が弱かったのだろうか」と。
戦時中、八重山の島々では日本軍の命令でマラリア有病地帯に強制疎開させられた大勢の住民が犠牲になった。潮平さん自身、マラリアで生死の境をさまよった。

「もう一つの沖縄戦」といわれる戦争マラリア。軍隊がいたがゆえの悲劇だ。
石垣市では2010年2月の市長選で、4期つとめた革新市長が敗れ、40代前半の保守系市長が誕生。2010年9月の市議選でも保革が逆転した。
玉津氏は同月、市長の肝いりで高校校長を任期途中で辞めて石垣市教育長に転身した。そして同時期に起きたのが、あの尖閣諸島中国漁船衝突事件だ。

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