◇ 支援を検討中の水力発電所周辺に「1万8,000個もの地雷」
日本政府が先月、ビルマ(ミャンマー)のバルーチャウン第二水力発電所の補修工事に政府開発援助(ODA)供与を検討していると発表したことについて、現地で調査を行う環境団体が人権問題などを理由に反対を表明した。
日本の外務省は10月21日、ビルマ政府が民主化に向けて前進しているとし、同国東部カレンニー州にあるバルーチャウン第二水力発電所の補修工事のためにODAを供与する用意があると発表した。同発電所は日本の戦後賠償によって建設され、最近では2002年にODAによって補修工事を行う交換公文がビルマ政府と交わされたが、その後工事が中断していた。
この発表を受けて、バルーチャウン第二水力発電所が周辺地域に及ぼす環境・社会的悪影響を調査してきた「カレンニー開発調査グループ(KDRG)」と、ビルマ国内の水力ダム開発を監視する「ビルマ河川ネットワーク(BRN)」の2つの亡命者団体(ともにタイ・チェンマイに本部)が2日、「日本政府はバルーチャウン発電所への新たな援助を検討する前に、同発電所周辺の人権侵害状況を調査するべきだ」とする声明を出した。
発電所があるカレンニー州では、少数民族であるカレンニーの武装勢力と政府軍との対立が続いており、発電所の周辺には警備のために多数の政府軍兵士が駐屯している。KDRGの調査によれば、発電所が建設された当時には約1万人の住民が強制的に移転させられた。
また当時、地域の軍事化に伴い、政府軍兵士による性暴力、超法規的処刑、強制労働などの残虐行為が頻発した。現在も発電所や送電塔の周辺には推定1万8,000個の地雷が埋設されており、住民の移動や生活に支障を来しているという。
発電所が生産する電力の大半はヤンゴンなど都市部に送られるため、周辺住民の大半は電気のない生活を送る。ビルマでの新政府発足後も、発電所周辺の状況に大きな変化はない。BRNのサイサイ氏は「今はビルマへの大規模な投資をするべきときではない。ビルマでの水力開発事業は周辺住民に恩恵をもたらすどころか、人権侵害を引き起こしている」と述べた。
【寄稿:秋元由紀】