石丸:順川地区炭鉱の場合、労働者の何%が除隊軍人ですか?
キム:ざっと採炭工の三〇%くらいですね。除隊軍人は全員採炭工になるんですよ。坑外の他の職場には行けない。一〇〇%採炭工。
石丸:軍隊に行っても除隊すれば自分の故郷に帰りたいじゃないですか。帰してくれないんですか?
石丸:普通は帰してくれますよ。でも特別に〈方針〉除隊になると無理。つまり「今回の除隊軍人のうち×× 人は炭鉱に送りなさい」という金正日の〈方針〉だから誰も変えられない。だから〈方針〉除隊になると軍人たちも大騒ぎになります。誰も炭鉱には行きたくないから。
石丸:お嫁さんも紹介してもらえるんですか?
キム:朝鮮は女性が多いですから結婚できない男はいないんですよ(独身男性の多くが軍に服務しているため女性が多い)。
石丸:女性も炭鉱に嫁ぐのは嫌なのでは?
キム:嫌だけれど、とにかく女性が余っているし、除隊軍人も死ぬまで炭鉱で働くわけじゃないんです。三、四年したら別の場所に移るチャンスがあります。聞いたところだと、順川地区炭鉱に配置された除隊軍人は全員結婚したそうです。
職場の紹介の他に、それまで恋愛していた恋人を連れて来てきて結婚することもあります。問題は一人息子の場合ですね。親が明日食べるものがなくて息子に頼ってくるケースがある。
すると、自分は〈方針〉除隊だから故郷に帰れないといって、両親を炭鉱に連れて来るんです。すると今度は、炭鉱で食糧の面倒をみてやらないといけなくなる。結婚登録もしていない恋人を連れて来てその娘のコメまでくれ、というケースもあります。炭鉱の宿舎では、結婚登録をしていない者の分まではコメはやれない。そうすると恋人と離れて暮らすのが嫌だから自分のご飯を一緒に分けて食べるしかない。
※リ・サンボン氏による補足
「除隊軍人たちが配置されて来ると盗みや乱暴を働いて秩序が悪くなる。炭鉱が嫌で逃げ出す者も時々いた。女性たちも炭鉱に嫁ぐのを嫌がるから、他の工場・企業所に勤める若い独身女性を無理矢理炭鉱に進出(志願した形にして配置させること)させることが昔からあった」。
(つづく)
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