◆ 活発化する「チャト」
キム記者が順川地区の炭坑で取材した「チャト」の仕組みは、次のようなものである。
組織や個人の投資家が、資材・機材から労働者の雇用まで責任を持って運営する「基地」と呼ばれる組織(実質的には会社)を作る。ただし、北朝鮮では私企業というのは許されないので、軍や発電所などの公的機関の「看板」を借り受け、その傘下企業として国営炭鉱の一部に入り込み直営するのだ。

この経営者は「基地長」と呼ばれる。その対価として、「看板」を貸してくれた機関に石炭の現物を納めることになっている。現状では「基地」の規模は大きくなく、労働者は普通二〜三〇人程度、多いところは五〇人以上になる。

キム記者の取材した直洞炭鉱の場合、保安部(警察)や保衛部、軍、そして軍が運営に責任を持つ慈江道の熙川(ヒチョン)発電所、国防大学などが看板を貸しているという。各々の「チャト」は「国防大学基地」「保安部基地」などと呼ばれているという。

以下は、「チャト」の具体的な運営に関するキム記者へのインタビューである。

石丸:「チャト」というのはどう意味ですか?
キム:由来はよくわからないけれど、自(チャ)と土(ト)の字から「自土=チャト」と呼ばれるようになったんだと思います。(実質的に)個人が運営するからでしょう。でも必ずどこかの組織の「看板」をつけなければならないんです。「看板」を借りた組織には、一年に石炭何百トンかを送ります。

労働者には給料と配給を出して残りが自分の取り分になります。石炭さえ採れれば「基地長」はいい暮らしができますよ。「チャト」は数年前に直洞炭鉱で始まって、今では全国に広がりました。
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