石丸:うーん。まさに市場経済のやり方だ。
キム:そうですよ。まったくの市場経済ですよ「チャト」は。機関に石炭を契約した量を差し出せば、あとは個人が好きに処分しろというやり方です。
石丸:中国の資本の関与はありますか?
キム:それは聞かないですね。「チャト」だけでなく国営炭鉱にも、中国の投資が入ったとか、中国人が炭鉱で働いているとかはないでしょう。中国製の機械を買ってきて入れている炭鉱はありますが。
石丸:「チャト」でも組織生活(注1)をしますか?
キム:やりますけど形式的です。国営炭鉱のように厳しくはない。人も少ないし、誰も統制する人がいないから。党員であっても生活総和も簡単に済ませています。
石丸:「チャト」にも肖像画が掛けられていますか?
キム:それは、ありますよ。
直洞炭鉱において「チャト」全体の生産量や労働者の数を知りたいところだが、今回の取材ではそこまで至らなかった。仮に「チャト」一つにつき二〇人の採炭工がいるとすると、二〇〇ヶ所で四〇〇〇人となる。キム記者が推定する直洞の国営炭鉱の採炭工は一五〇〇人だから、「チャト」の方が多いことになる。追加取材を行いたいと思うが、「チャト」が、国営炭鉱の石炭生産をかなり浸食していることは確かだと思われる。
(つづく)
注1 組織生活:北朝鮮国民は人民学校(小学校)に入った時から、必ず何らかの組織に所属することになる。労働党員でない場合は青年同盟、女性同盟などの「社会団体」に所属する。そして主に職場や学校や居住区域単位でうんざりするような組織生活を強いられる。例えば、生活総和と呼ばれる日常生活に関する相互批判会議や、政治方針の学習会などが毎週繰り返させられる。農村などへの労働動員も頻繁だ。
◆ 〈リムジンガン〉現地取材:衰退する石炭産業の現在(6)
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