三重県亀山市のフェロシルトで造成した茶畑。お茶の木はほとんど枯れ、雑草すら生えない2005年7月撮影:井部正之

 

ところが、この「リサイクル製品」から六価クロムやフッ素などの有害物質が環境基準を上回って検出され、各地で撤去を求める騒ぎになるなどして大きな問題になっている。
だが、過熱した報道ぶりとは裏腹に、問題の本質が報じられていないと「ダイオキシン・処分場問題愛知ネットワーク」代表で、愛西市の市議でもある吉川三津子さんはいう。

「もともとはフェロシルトに放射性物質がふくまれていることが問題だったはずなのに、いつの間にか六価クロム汚染にすり替えられてしまった。とくに石原産業がいろんな廃液を混ぜていたことを認めてからは放射能汚染のことはいっさいマスコミに聞かれなくなった。本当のフェロシルト問題は放射能をふくんだ廃棄物のリサイクル問題なんです」
吉川さんがこの問題と関わるようになったのは3年前の2002年7月、ある工事で、「へんな土が持ちこまれている。放射能がふくまれているらしい」との情報を得てからだ。

採取した赤茶色の土を専門家に分析してもらったところ、放射性物質であるウランやトリウムが通常より多く検出された。これが石原産業で酸化チタンを製造したとき発生する廃棄物を「リサイクル」したフェロシルトだったのだという。
しかも三重県は2003年9月、フェロシルトに通常より高い放射線が測定されることを承知していながら、「品質、安全性等が一定の基準に適合している」として「リサイクル製品」に認定していた(2005年6月に石原産業が取り下げ)。このお墨付きが問題を拡大させる一因となった。

やがて愛知県瀬戸市や岐阜県土岐市、瑞浪市、三重県亀山市などで、次々とフェロシルトを「リサイクル」したという現場が明らかになる。

石原産業から複数の業者を経て購入したという施工業者は、ほとんどの現場で「ケナフの森をつくる」などと、ケナフ栽培を名目にフェロシルトを持ちこんでいた。今年3月以降、私は吉川さんらに案内してもらって主要な「リサイクル」現場を歩いてみたが、フェロシルトが数万トンから十数万トンも山積みされたり、埋められていたり、どうみても不法投棄としか思えなかった。北丘町では端のほうに形ばかりのケナフ畑があったが、ケナフはみな枯れていた。
「明らかに不法投棄です」という吉川さんらのことばは当然といえた。(つづく)
(初出『週刊金曜日』2005年11月18日号)

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