「クリアランス制度」に不安の声
2005年5月、改正原子炉等規制法が成立した。この法改正で導入が決まった「クリアランス制度」によって、原発から発生する放射性廃棄物の扱いについての枠組みが大きく変わった。

これまで原子力施設の放射線管理区域で発生した廃棄物は、解体した機器をはじめ、建造物のコンクリートや金属くずなどすべてが放射性廃棄物として扱われ、特別な管理をされていた。ところが、今回の改正によって放射線汚染が一定レベル以下であれば放射性物質として扱わなくてよいことになったのである。

この基準を「クリアランスレベル」という。クリアランスレベルは、人体に与える影響が年間0.01ミリシーベルト以下となるよう設定されている。これはふつうの人が1年間に浴びる放射線の限度とされる1ミリシーベルトの100分の1である。

クリアランスレベル以下となった原発ゴミは、放射性物質を含んでいたり、汚染があっても「放射性物質として扱う必要がない廃棄物」「放射性物質でない廃棄物」としてふつうの産廃の扱いで処分される。

だが、反対する声は根強い。
「この制度によってこれまで厳重に管理されてきた放射性廃棄物が通常の産廃となって再利用されたりして身近な被曝が増えることになる。クリアランスレベルは放射性廃棄物として扱う量を抑え、安上がりに処分しようという、『スソ切り』です」

こう指摘するのは「放射性廃棄物スソ切り問題連絡会」事務局の末田一秀さんである。末田さんらは以前からクリアランス制度は一般の放射線被曝を拡大するものだとして反対してきた。

末田さんのいうとおり、じつはクリアランス制度によって原発解体ゴミの大半は産廃となることが明らかになっている。

東海原発の解体計画によれば、計約19万トンの廃棄物のうち、放射性廃棄物として扱われるのは約1万8000トンと、全体の1割にも満たない量にすぎない。大規模な原発では1基の解体で発生する廃棄物は55万トンに達するのだが、放射性廃棄物扱いとなるのはこのうちわずか1~2%という。

東海原発では9割以上、大型の原発では98~99%が「放射性物質として扱う必要がない廃棄物」あるいは「放射性物質でない廃棄物」になるのだ。

そうして産廃となった原発の〝放射性〟ゴミは、産廃処分場に埋め立てられるか、「リサイクル」される。

電気事業連合会はそうした原発解体ゴミを「リサイクル」することは「循環型社会の要請に応えるもの」(2004年5月の経済産業省の小委員会資料)としており、政府もまた「循環型社会の形成に寄与する」(2005年5月の参議院経済産業委員会における環境省答弁)と、これを後押ししている。〝放射性〟ゴミの「リサイクル」は国策として積極的に進められようとしているのだ。

金属類やコンクリートは大半が「リサイクル」に回されるとみられる。フライパンや鍋、飲料水の缶、ベッド、冷蔵庫、マンションの壁など身の回りのさまざまな金属類やコンクリートに放射性を帯びた原発ゴミが入ってくる可能性がある。

むろん政府はこうした危険を承知している。原子力安全委員会(安全委)はフライパンや飲料水の缶、ベッド、冷蔵庫といった日常品からの被曝量を推定している。国民の被曝は織り込みずみなのである。(つづく)
(初出『週刊金曜日』2005年11月25日号)

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