◆妻失った痛み
洞源院では毎朝、境内などに避難している人々が集まり、犠牲者の冥福を祈ってきた。震災から3カ月の節目の6月10日、葬儀をしてもらった。
「寺に避難できてよかった。新井英一さんをはじめ、いろんな人が激励に来てくれ、元気をもらった。生かされている命をみんなのために役立てたいと思うようになった」と振り返る阿部さん。仮設住宅に一人で暮らすようになっても、洞源院の行事に参加している。

とはいえ、結婚41年の妻を亡くした心の傷は今も癒えることはない。
「生きているだけでも良かったんだよと言われても嬉しくはないねえ。失ったものの大きさは計り知れない」
阿部さん自身の69回目の誕生日に納骨するという。
「おっかあをうちに入れてあげようと思って......」
そう言って阿部さんは再び海に目をやった。
(つづく)
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