東日本大震災から8カ月。宮城県石巻市と仙台市の東北朝鮮初中級学校を訪ねた。
大阪市生野区の焼肉亭「高橋」の女将で、「新聞うずみ火」の読者でもある高貞子(コ・ジャンジャ)さんのお誘い。
高さんが10月に開いた東日本大震災応援チャリティーコンサートの収益金を届ける1泊3日のツアーに参加した。
矢野宏(新聞うずみ火)
<東北朝鮮初中級学校>
◆自作の詩朗読
石巻市からバスで1時間。東北朝鮮初中級学校は山道を登った緑豊かな高台にある。
尹鐘哲(ユン・ジョンチョル)校長ら学校関係者、地元の在日の人たちが一行を歓迎してくれた。収益金を尹校長に手渡した高さんは、今回の震災で被災した児童に向けたメッセージを込めた詩「あなたがはじまり」を朗読した。
" 故郷は海のほとり
潮風はやさしく 頬をなで
さざなみの音は 幼な子の子守歌
波の間に間に
魚達は泳いでいる
ああ すべてを与えてくれた海、海よ
ああ 3月11日
海はすべてを奪う
目の前に 高く高くそびえ
黒い海 人も 車も 家も 船も
すべてをのみ込んで
すべてを奪った
ああ すべて海の彼方に
父よ母よ妹よ 愛する人よ
すべては海の彼方
暗い闇の中で天地がくずれ
たった一人
誰かが手を
その手の温もりに
はじめて涙があふれ
熱くとどめなく こみあげる
のこされて
生かされて
ああ あなたがはじまり"
高さんは日本児童文学協会から被災地の子どもに届けるメッセージを依頼された。だが、なかなか書けない。テレビで見る惨劇に言葉が出ず、「何を書いてもうそになる」と思ったからだ。
暗闇の中で人の手と手にふれたとき、その温もりに思わず、涙があふれ、その温もりがありがたかったという人がいた。
高さんは「この子がこの地を愛し、またあの海を愛し、人を愛し始める。人と人の手の温もりがあればはじめられる。この子がはじまりの人になる」と感じたという。
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