◆ 戦争損害受忍論は国の責任放棄
ほかの国では、民間の空襲被害者はどのような扱いを受けているのか。
欧米諸国では、戦勝国、敗戦国を問わず、軍人・軍属と民間人とを区別することなく補償を行っており(国民平等主義)、自国民と外国人を区別することなく、戦争被害者に対する補償を行っている(内外人平等主義)。

さて、7月11日の結審で意見陳述に立った5人の弁護士は、「戦争損害受忍論は国の責任放棄の政治的宣言に過ぎない。国会の判断にゆだねるべきだという『立法裁量論』に逃げないでもらいたい」「司法が手を差し出さないで誰が救済するのか。原告を見捨ててはならない」などと主張した。

街頭で支援を呼びかける原告ら
街頭で支援を呼びかける原告ら

原告を代表して安野さんが「国が『被害を受忍しなければならない』として謝罪も補償も拒んできたことは、身体の傷にも増して、人間としての尊厳を踏みにじり、人生を惨めなものにしてきました」と語り、こう訴えた。

「私がいま最も恐れているのは、私たち戦争体験者がいなくなった時代に、再び戦争が起き、子や孫たちが国から『君たちのおばあさんは受忍したんだよ。だから、あなたたちも戦争被害を受忍しなさい』と言われることです。

国にきちんと空襲被害者を救済させることは、生き残った私たちの責務です。国に差別なき戦後補償を求めることは、人間一人ひとりが大切にされる社会、平和な明日をつくる架け橋だと思っています」

一方、被告の国側は第1回口頭弁論で「原告の主張は理由がない」という答弁書を提出したあと、何も語ろうとしなかったが、原告が提出した準備書面の中で「戦争被害は国民が等しく受忍しなければならないという考え方は、過去の裁判例で一貫している」と反論している。
判決が言い渡される12月7日は、太平洋戦争の開戦70年の前日。翌8日の紙面に朗報が掲載されるのか。あらためてこの国が一人ひとりの命を大切にできる国かどうかが試されていると言っていい。
原告たちの「このままでは死ねない」という叫びが裁判官の心に届くことを祈っている。
「新聞うずみ火」:http://uzumibi.com/
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