ところが、輸出を再開すると今度は石炭不足で、近隣の東平壌と北倉にある火力発電所の稼働に支障が出て、平壌市と平安南道への電力供給ががくっと落ちた。部隊で使う暖房用の石炭を取りに軍の車が来ても、積んでいく石炭がないんだ。
炭鉱への電気供給も悪くなった。炭鉱地区は一日に二〇時間程度は供給があったのに、一〇年の一二月からは八時間ぐらいしか電気が来ず、ポンプなどの機械を動かすのに支障が出始めた。労働者住宅では水道が出なくなっていた。
また、これは労働者への食糧配給が悪化したこととも関係があることだが、新昌炭鉱の場合は、通常一日一〇〇〇トン生産すると言われているのに、今年に入ってからはせいぜい二〜三〇〇トン程度しか生産できていない。四月に入ってからは、一〇〇トンにも満たないだろう。他所の炭鉱も事情は似たり寄ったりだから、このままでは輸出する石炭も減ってしまうだろう。
昨年から今年年初にかけての石炭輸出の急増は、石炭産業の回復を意味するものではないということがお分かりいただけたと思う。外貨がのどから手が出るほど欲しい金正日政権としては、石炭をどんどん輸出したいところなのだろうが、そうすることが石炭産業自体の首を締めることになっているのである。
原因はどこにあるのか。結局のところ、経済改革に手をつけず、対外開放も拒んだまま北朝鮮式社会主義に拘泥した上、「先軍政治」の名のもとに経済素人の軍部に運営を委ねた政権に問題があるのは明らかだろう。
解決策は、外国資本に経営権を保証した上で開発を委ねること、「チャト」のような自立的経営体を保護育成していくことなど、改革開放の方向に舵を切る以外になさそうである。そうしない限り、良質で豊富な石炭資源の多くはこの先、地下に眠ったまま活かされなくなるだろう。
(おわり)
◆ 〈リムジンガン〉現地取材:衰退する石炭産業の現在(6)
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