◆「死ぬんなら死んだらいい」...94年の金日成主席死去時とは大差
北朝鮮の住民が金正日総書記の死去の報を冷ややかに受け止めているという報告が、北朝鮮内部から伝えられた。
北朝鮮北部、両江道の朝中国境沿いの街に住み、北朝鮮内部情報誌「リムジンガン」の取材協力者のオ・ソンリム(呉成林)氏は、金総書記が死亡した19日の夜、電話で現地の様子を次のように伝えてきた。
「街は落ち着いています。ここ数日、電気事情が特に悪く、正午の放送をテレビで見られなかった人がたくさんいました。そのため、金正日死去のニュースは、午後になってから市場で商売していた人々の口を通じて広がったんです。しかし、人々の反応は1994年に金日成が死んだ時とは180度違います。例えば当時は、金日成が死んだ直後から銅像や革命史跡地などをたくさんの人が訪ね、哀悼の意を表したものですが、今回はそうした場所にも人影がまばらです。道端では女性たちが商売を続けているし、当局が特段取り締まるわけでもない。以前だったら、こんな重大な時に商売をするなんて、『国家反逆者』のレッテルを貼られてもおかしくない行為だったのに」
19日の晩になって、朝鮮中央テレビなど国営メディアでは、故金日成主席の銅像や肖像画を前に、人々が泣き崩れる姿をしきりに放映しているが、実際の住民の雰囲気は随分違うようだ。オ・ソンリム氏はこう続ける。
「どちらかと言うと、来るものが来た、と冷静に受け止めている人の方が多いようです。『死ぬのならば死ねばいい、関係ない』という声を聞きました。昨日(18日)と今日で、住民の生活に目立った違いは見られませんよ」
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