昨年末に起きたトルコ軍による民間人誤爆事件で、トルコ南東部ではクルド人らの抗議行動があいつぎ、緊張が高まっている。
誤爆はイラク国境付近でクルディスタン労働者党(PKK)のゲリラ掃討を進めるトルコ軍機がイラク国境付近で行った空爆作戦のなかで起きたもので、クルド人民間人35人が死亡した。トルコ政府は誤爆を認めた上で、地元密輸業者をゲリラと誤認した、と発表した。
現場はイラク国境に接するシュルナック県ウルデレ近郊の山岳地帯でイラク側からディーゼル油やタバコなどラバに乗せて密輸していた地元集落の村民が犠牲となった。
死亡した多くは、人口600人あまりのオルタス村のクルド人。親族28人を失ったラマザン・カディルさんは(57)は話す。
「ここはPKKと対峙するキョイコルジュ(部落警備兵)の村であり、ゲリラ協力者がいないのは明らか。『密輸者』といっても、もともと国境にまたがり一族が暮らし、100年以上も昔からこの仕事をしてきた。軍はすべてを把握しているはずなのに、なぜ空爆したのか。
PKKの司令官は4日、クルド語衛星放送ロジテレビのニュースでの電話インタビューで「これらの場所でゲリラ部隊は活動していなかった」と答えた。
事件を受け、トルコ政府は犠牲者遺族に賠償金を支払うことを表明し事態の収束をはかっているが、抗議行動は南東部各地で広まりつつある
多くのクルド人が暮らす南東部最大の都市ディヤルバクルでは誤爆事件への抗議デモがあいつぎ、治安部隊との衝突が繰り返されるなど緊張が高まっている。
人権団体IHDディヤルバクル支部のセルダル・チェレビ弁護士(30)は、「クルド語使用制限緩和など部分的な進展も見られるが、南東部では警察や軍によるクルド人の逮捕や拷問が続き人権状況が改善されているとはいえないのが現状。それらが若者たちをPKKゲリラ志願に向かわせる一因ともなっている」と話した。
【玉本英子 トルコ南東部ディヤルバクル】