日本の最南端、沖縄・八重山諸島が「教科書問題」で揺れている。
育鵬社版の中学公民教科書の採択をめぐる沖縄・八重山地区の教科書問題は、もつれにもつれたまま越年した。育鵬社にこだわり詭弁を弄す文部科学省に対し、八重山では反発の声が強まるばかりだ。一方、この問題と深く関わる与那国島への自衛隊誘致問題も、ここにきて緊迫の度合いを増している。
栗原佳子(新聞うずみ火)
◆ 自衛隊誘致で揺れる与那国島
「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版公民の特徴の一つが自衛隊賛美だ。そして、石垣市と与那国町では保守系首長のもと、自衛隊配備の動きが進む。
政府が昨年策定した新防衛大綱、中期防衛力整備計画は先島地域(宮古、八重山)への軍備強化をうたった。与那国島には沿岸監視隊を配備することも閣議決定。今年度中に候補地を決め、来年度から用地取得と造成工事に着手、2015年度中の部隊配備を目指すとしている。
与那国島は石垣島と台湾の中間に位置する国境の島だ。人口は約1600人。
「自衛隊誘致は住民の悲願です」「自衛隊基地誘致に断固反対」――。
いま、島内には誘致派反対派双方の横断幕がせめぎあう。
◆ 住民は圧倒的に反対
町議会が誘致決議をしたのは2008年9月。自衛隊活動への支援協力を目的とする民間団体「与那国防衛協会」が集めた514人分の誘致署名が根拠で、09年6月には外間守吉町長が防衛省に陸自の基地配備を要請した。名目は人口増による町の活性化である。
実は、住民の大多数は誘致に反対だ。昨年8月、琉球新報が与那国町民に調査したところ、誘致賛成は13・3%。反対は77・3%と圧倒した。
自宅兼店舗の前に「ドゥナンチマカティラリヌン(与那国島を捨てられない)」と書いた立て看板で意思を示す田島琴江さんは「美しい自然は一度壊したら戻らない。どうしてもこの島を守りたい」と話す。
田島さんら島の女性たちは「与那国島の明るい未来を願うイソバの会」を結成、公私とも多忙な中、町長や防衛相に申し入れたり、ブログやツイッターをフルに活用したり、広く内外に訴えている。
イソバは、15世紀に島を治めた女性首長サンアイ・イソバにちなむ。
自衛隊配備が、米軍との共同使用に道を開くのではないかという懸念も住民には根強くある。与那国島では07年6月、祖納港に米掃海艦2隻が入港。当時のケビン・メア在沖総領事は極秘裏に「与那国島は台湾有事の際には掃海拠点になり得る」と本国に報告していたという。
最近、ウィキリークスが暴露したばかりだ。
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