◆ 中学生の署名没収
反対住民でつくる「与那国改革会議」(崎原正吉議長)は昨年9月、決議撤回と誘致活動の中止を求める署名を集め町長と町議会に提出した。誘致賛成を上回る556人分。
しかし、説明責任や住民投票を求める住民たちに対し、外間町長は「もう(誘致の)スイッチは入ってしまって後戻りできない」と突っぱねた。
しかも町と防衛省は昨年11月17日、ほぼ抜き打ち的に説明会を共催。「誘致ありき」の中身に反対住民が反発、2日後の19日には、誘致活動の白紙撤回を求める大掛かりな抗議集会が開かれた。戦争体験者や中学生も登壇、思いのたけを訴えたという。
生徒たちの中には自主的に自衛隊誘致反対の署名活動もはじまっていた。ところが集めた署名用紙を校長が没収していたことが発覚した。校長は教育委員会からの連絡を受け対応したという。与那国島の崎原用能教育長は、育鵬社版公民を積極的に是とする一人だ。
育鵬社版公民が八重山でごり押しされてきた過程と、住民の合意もないまま既成事実化する自衛隊誘致の動きは重なり合う。そもそも誘致の根拠とされる賛成署名も謎が多く、当時、署名を集めていることすら知らなかった住民は少なくないという。
◆ 「竹富町は自費で」
八重山の公民教科書採択問題は、昨年8月23日の八重山採択地区協議会で育鵬社版が選ばれたことが発端。協議会会長の玉津博克・石垣市教育長が独断でいくつもの規約を変更、十分な議論すらないままに決められた。
しかし、石垣市教委と与那国町教委は答申通り育鵬社版公民を選定。竹富町教委は東京書籍版を採択した。
役員会で再協議するも決裂。結局、昨年9 月8 日、沖縄県教委の指導助言のもと3 市町の全教育委員の「全員協議」が行われた。多数決で東京書籍版が圧勝。育鵬社版は逆転不採択となった。
ところが玉津教育長と崎原教育長はすかさず「9 ・8 協議」の無効を訴える文書を文科省に提出。中川正春文科相は暗に育鵬社版への一本化を促し、さらには昨年10月26日、竹富町が東京書籍を採択するなら無償にはならない、つまり自費で購入しろという方針を示した。
「教科書無償措置法では採択地区で教科書の統一を求め、地方教育行政法では採択権は教育委員会にあるとしている。今回のようなケースが想定されながら、文科省は法の不備を放置してきた。義務教育の無償をうたう憲法にも違反している」と「子どもと教科書を考える八重山地区住民の会」の大浜敏夫事務局長。
沖縄県教委も「9月8日の全員協議は成立」という立場。もちろん竹富町は文科省に猛反発している。
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