独裁体制を支えるのは「恐怖」
Q:先ほど、北朝鮮の政治システムの中心には「恐怖」があるとおっしゃいました。あなたが学生運動をされていた80年代にも、韓国の公安機関による拷問があったと思いますが、そういった韓国の独裁体制下での恐怖と、現在の北朝鮮社会での恐怖は別物なのでしょうか。
A:完全に次元が違いますね。私は核心メンバーだったので、86年11月に逮捕された際に随分と拷問を受けましたが、他のメンバーはそうでもありませんでした。拷問の有無を別としても、北朝鮮の処罰の強度は韓国とは比べ物になりません。北朝鮮では政治犯として逮捕されると最低でも10年から15年、ひどい場合には一生を政治犯収容所で終えなければなりません。
銃殺されることも大変多く、さらに家族にまで累が及ぶ。こうした部分は韓国では想像もできません。学生運動をやっている時分には「命をかけてやる」と言ったりもしましたが、実際に命の危険を感じたことはほとんどありませんでしたから。ですが北朝鮮はそうではありません。(政府に反対した場合)実際に命を取られることがあると考えると、「恐怖」の水準というのは韓国のそれとは比べ物にならないでしょう。

四月に注目
Q:中国、アメリカ、韓国などの国々は、北朝鮮が不安定化しないように支えようとしているように見えます。こうした状況が今後も続くと思いますか
A:中国としては、北朝鮮が崩壊することを望みませんから、今後も一貫して崩壊を防ぐ政策を採るでしょう。ですが韓国政府には、どうしても崩壊を防がなければならない、といった切実さは無いように思えます。
もちろん、今すぐに崩壊する場合には韓国経済が打撃を受けるでしょうが、いずれにしろ、それはいつかは甘受しなければならないことですから。崩壊するのならば、それを受け入れる方向に向かうのではないでしょうか。日本の場合は北朝鮮の問題に主導的に介入するような政治決定システムは無いのが現実でしょう。
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