◆金正日氏死去前後は暴騰 人民元相場の安定と一時的配給実施が要因
北朝鮮各地の食糧価格がこの数週間安定していることがわかった。アジアプレスの北朝鮮内部の取材パートナーたちが伝えてきた。
北朝鮮内部情報を伝える雑誌「リムジンガン」のために取材をする協力者たちは、2月26日から3月4日にかけて、主な消費物資の価格を、北部の両江道の恵山(ヘサン)市と、咸鏡北道の清津(チョンジン)、茂山(ムサン)、会寧(フェリョン)の計四都市を中心に調査した。価格は下記の通り。いずれもジャンマダン(公設市場)での販売価格で単位は朝鮮ウォン、1キロあたりの価格だ。
○咸鏡北道の三都市
国内産白米 2700~3300
未加工のトウモロコシ 900~1200
○恵山市
国内産白米 3000~3300
中国産白米 2700
未加工のトウモロコシ 1350
ガソリンは6500~8000(1キロ当たり)、中国人民元1元は640~655、1米ドルは4000~4100(いずれも実勢レート)。
北朝鮮の都市の食糧価格は、昨年10月頃から二か月にわたって乱高下を繰り返して不安定になっていた。金正日氏死去直後に市場が一時閉鎖されると、白米の闇価格が1キロ当たり1万ウォンに急騰するなど庶民の暮らしに混乱が生じていた。
国民への食糧配給制が90年代に麻痺して以来、北朝鮮住民のおよそ八割はジャンマダンで食糧購入して暮らしていると、アジアプレスでは見ている。また、食糧価格の変動は、ほぼ人民元の交換レートの変動と一致しており、ウォン-人民元相場の安定が、食糧価格の安定として現れていると思われる。
昨年後半は、平壌再開発事業などのために、建設資材や車両、ガソリンの中国からの輸入を増やす必要が生じ、外貨需要が急増して、一時期1人民元が800ウォンを超えていた。つまり朝鮮ウォンが大幅下落した分、市場の食糧価格も急騰していたわけだ。
二月に入って以降、当局は故金正日氏の生誕記念日(16日)に合わせて一時的に食糧配給を実施しており、市場価格の下落の一因になっているものと思われる。
(石丸次郎)