ここでは、先に訪れた新義州市よりも多くの人々を河辺で見かけることができた。凍った湖の上でゆったりと釣りをする中年男性、鴨緑江に水汲みに来た少年た ち、荷物を載せた自転車でさっそうと走る女性の姿もあり、活気のある様子だった。船上から手を振る筆者に向けて手を振り返す子どもたちもいた。
動員され仕事をしているのか、団体で移動する人々もいた。そこから少し離れた場所では、塀を作っているものとおぼしき工事が行われていた。シャベルを手にした人や、石を手で運ぶ人、バケツ片手に川と工事現場を行き来する人など、数十人の人々がせわしげに働いていた。
そんな中、2隻の警備艇が目についた。新式のモーターボートのようであった。取材班を乗せた船が通りかかるや否や、オレンジ色の救命チョッキを着た軍人た ちは仕事の手を止め、船が立ち去るまでじっとこちらを注視していた。元々禁止されている写真撮影を隠れてしていたこともあり、警備艇がすぐにでも発進する のではないかと不安になった。
さらに上流を目指していると、突然、取材班の乗っていた船の船長が、欄干に立っていた筆者に向かって「船内に戻れ!」と声を荒げた。聞くと、中国の国境警 備隊から警告があったと言う。遊覧船に乗って北朝鮮側をずっと撮影していた私たちを、北朝鮮の国境警備隊でも望遠鏡などで監視していたのだろう。北朝鮮の 警備隊から中国の警備隊に、注意を要請する連絡があったそうだ。
結局、舳先を返し、船着場に戻らざるを得なかった。厳戒態勢の朝中国境の雰囲気を肌で感じた一幕だった。