◆年間数百万トンの鉄鉱石を中国へ輸出...アジア最大級の鉄鉱山

北朝鮮の地下資源輸出への依存が高まっている。最大の貿易相手国である中国との間では、2011年の輸出額24億2千万ドルのうち、65.1%を石炭と鉄鉱石が占めた。鉄鉱石輸出のすべては、咸鏡北道の茂山(ムサン)鉱山で採掘されたものと思われる。

茂山鉱山は可採量が数十億トンに上る大規模な優良鉱山であり、中国国境の豆満江沿いに位置する立地のよさもあって、北朝鮮にとっては、貴重な外貨稼ぎ拠点になっている。
筆者は三月下旬、豆満江を挟んで茂山郡と向かい合う中国側の南坪鎮を訪れた。そこで見たのは、昨年より開発がさらに進んでいた茂山鉱山の姿だった。

中国側から見た茂山鉱山。可採量は数十億トンと上るとされる、アジア最大級の鉄鉱山。多くの鉄鉱石(精鉱)を中国へと輸出していることで知られる。昨年5月の取材当時には見られなかった、輸送管のような建造物が新たに設置されていた。2012年3月 南正学(ナム・ジョンハク)撮影(アジアプレス)
中国側から見た茂山鉱山。可採量は数十億トンと上るとされる、アジア最大級の鉄鉱山。多くの鉄鉱石(精鉱)を中国へと輸出していることで知られる。昨年5月の取材当時には見られなかった、輸送管のような建造物が新たに設置されていた。2012年3月 南正学(ナム・ジョンハク)撮影(アジアプレス)

 

南坪鎮は、吉林省延辺朝鮮族自治州の和龍市から車で一時間ほど。わずかその間に、30台以上の精鉱を満載した20トンクラスの大型ダンプカーとすれ違った。これだけでもざっと見て600トン。いかに多くの鉄鉱石が茂山鉱山から中国に流れて行っているのかが分かる。

南坪鎮には、茂山を一望できる高台が観光スポットとして整備されている。取材当日はあいにくの曇りだったが、数キロ先に見える茂山鉱山からは、数分ごとに発破音が聞こえてきた。さらに鉱山をよく眺めると、昨年5月には無かった建造物が山の頂上部分に設置されているのが見えた。採掘した鉱石を麓に送る輸送管の施設のようである。

南坪鎮側にも変化があった。2009年から始まっている、和龍市内と南坪鎮を結ぶ40キロ余りの鉄道工事が完成に近づいていたのだ。「和坪鉄道」と名付けられたこの路線が完成すれば、これまでよりも多い量の鉄鉱石を、より安く大量に輸送することができる。環境への影響も抑えられる。和龍市の周辺地域ではひっきりなしに往来するダンプカーが、住環境に少なくない悪影響を及ぼしており、改善が急がれていた。

茂山鉱山で産出された鉄鉱石のうち、一年にどれくらいの量が中国へと運ばれているのかは、公表されていない。だが、わずか一年足らずで大きく姿を変えた鉱山とその周辺の様子からは、朝中両国が茂山鉱山に注ぐ関心の高さを十分に読み取ることができた。
(ナム・ジョンハク)

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