○「人工衛星」の失敗は「もったいない」
問:その後(前回の電話は13日)、「人工衛星」打ち上げ失敗についてのニュースは聞きましたか?
答:私は見られませんでしたが、他の人たちはニュースで知ったそうです。13日のニュースで、「衛星の発射は失敗した」と説明があったそうです。
問:テレビを通じて知ったということですか?
答:そうです。昨日(14日)から電気が来ているので、テレビを見て知りました。
問:何時から(電気が)来ましたか?
答:10時ころから来ています。
問:今も来ていますか?
答:来ています。
問:打ち上げが失敗したことについて、人々の間ではどんな話が交わされているのでしょうか?どう思っているのか気になります。
答:はじめは流言飛語の類だと噂されてました(笑い)。
問:なるほど(笑い)
答:ですがすぐに、「世界中が見守っているのに、ウソがつけるはずがない」、「現にニュースを聞いた人もいるんだ」という風に事実が広がりました。発射失敗について、ここの人たちは良く言っていません。成功するならともかく、失敗したのでは、投資したお金が全部水の泡になってしまったわけじゃないかと。
問:衛星打ち上げに使ったお金は8億5千万ドルだそうです。こちらの報道によると、朝鮮の全人口が一年食べられるトウモロコシを買える金額だそうです。
答:朝鮮の人たちもそう思っているんです。そのお金があれば、庶民の暮らしも少しは楽になったのではないかと。失敗したと言うこともあって、「もったいない」という話が少しずつ漏れ聞こえてきます。
問:露骨に言えないにしても、それは不満を述べているわけですね。
答:そうですよ。どの道失敗したんですから。それもこれも国家のお金ですから...。
問:少ないお金でもなく、朝鮮の全国民が一年食べる量のお金ですからね
答:ええ、まったく(考えたくないといった風に)
問:今回の失敗で、不満を持つ人も多いでしょうね。
答:そうですよ。今もニュースで専門家達が失敗の原因を探っていると言っていますが、失敗した後に調査したところで何の意味がありますか。
問:覆水盆に返らず、ですね。
問:今回の一件で、金正恩の威信は少し傷つくでしょうか?本来ならば大々的に衛星も打ち上げて、住民に贈り物もして、「強盛大国」に入ると格好良く宣言をしたかった。住民もそれを望んでいるのに、そうならなかった。
答:朝鮮では、(指導者と国民の)間にいる幹部がみな、役割を果たせていないと言うんです。上から下まで幹部の誰もが、権力を利用して私腹を肥やすばかりだから、国民はただ腹を空かせるしかないと。金正日同志と政治が悪いのではなく、間にいる幹部たちが悪い、奸臣ばかりだと。
問:よくそういう話は聞きますし、ある程度そういった側面はあるでしょう。ですが今回の「衛星打ち上げ」に限って言えば中間幹部にできることではないですよね。国家の指導者だからできると。
答:それは事実ですね。
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