稲を収穫する親子と見られる農民。農民の子は農民以外の家に嫁ぐか、勉学やスポーツなど特別な技能が無い限り、農民になるしかない。2008年9月 黄海南道クァイル郡 撮影:沈義川(シム・ウィチョン)
稲を収穫する親子と見られる農民。農民の子は農民以外の家に嫁ぐか、勉学やスポーツなど特別な技能が無い限り、農民になるしかない。2008年9月 黄海南道クァイル郡 撮影:沈義川(シム・ウィチョン)

 

(4)農民の「やる気」低下
北朝鮮では農民のことを蔑んで「農胞(ノンポ)」と呼ぶことがある。「農奴」と似たような意味で使われる。北朝鮮の農業は「世襲制」も同様だ。農民の子は必ず農民という、封建時代のような身分制度が存在する。これはそうしなければ農場が成り立たないためだ。仕事は厳しく、生活は貧しい農民になることは一般的に忌避されており、このため、軍人が除隊時に農場へと強制的に配置されることも少なくない。農民自身も「農胞」と自嘲するほどで、その地位は社会でも最下層だといえる。

その農民たちから、これまで見てきたような三重苦、四重苦の悪条件が「やる気」を奪っている。「リムジンガン」のク記者によると、黄海南道の農場幹部はこう語ったという。
「例えば春にひょうが降って稲が倒れてしまったとしても、それはそれで、再び立ち起こせばいいだけの話です。ですが今ではそんな気力も農民たちには残っていません。一年中農作業をしたところで、手元に何も残らないんだから、やる気が出ないのも当然です」

そのため農場員はできるだけ手を抜こうとするようになる。作業能率はすこぶる悪いという。別の現地住民は、「農民は働かず、農繁期に支援に動員された学生と主婦が働いている。農民は口を出すだけだ」と、その様子を伝える。

だが、先の農場幹部は、「足りない肥料を補うためには、農場の作業が始まる前の朝二時に起き、堆肥を生産しなければならない。だが一日二度の粗末な食事では、早朝から起き上がる気力も無いのが農村の現実だ」とク記者に語っている。
ひもじいのは人間だけでは無い。

「畑を耕すための牛も、ろくに餌をもらえないため、ガリガリに痩せこけて役に立ちません」(黄海南道40代女性)。
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