3−Ⅰ 平壌10万戸住宅建設現場を行く[1]
取材:ク・グァンホ 整理・解説:石丸次郎
※この項の写真は二〇一一年八〜九月に平壌市の大同江(テドンガン)区域で撮影された。
「平壌はすごい建築ラッシュだった」。
二〇一一年の夏以降に平壌を訪れた人たちに共通する感想である。
「強盛国家」を実現するという虚構を国内外に宣伝するために、平壌では大々的に都市再開発事業が行われているが、その目玉が「平壌一〇万世帯(戸)住宅建設」だ。一〇万戸といえば、二〇〇戸の大型アパートに換算して五〇〇棟建てるという、とてつもなく大規模なプロジェクトだ。
これを一二年四月一五日の故金日成主席生誕日までに成し遂げることを目標に据え、平壌市内はあちこちが突貫工事現場と化していた。
平壌市内に住むク・グァンホ記者は昨年七月に電話で次のように伝えてきた。
「今年の春ごろまで、アパート建設工事は資材不足や作業員に与える食糧がなくてまったく低調だったが、初夏から工事が本格化しているのは確か。しかし、一〇万戸なんてとても無理だろう」。
一方、朝鮮中央通信など北朝鮮の官営メディアは「見違える平壌」などの見出しで、高層アパートの他、スケートリンクや大型公衆浴場、イルカショー施設までも立派に建設中などと、頻繁にこの首都整備プロジェクトが、驚くべき早さで順調に進んでいると報じている。
一〇月に入ってク記者は、豆満江を渡り中国に越境して来た。彼の撮った映像を見て驚いたのは、素人目にも工事が相当出鱈目なことである。
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