古いものには趣がある。歴史を感じさせる建物なら、なおさらだ。 そんな財産をうまく利用しているのが、このチェルシーマーケットである。
19世紀末に建てられた製菓会社の工場が改装され、評判のベーカリーや食材店が集まる人気スポットとなった。
この建物のあるチェルシー地区は、画廊などが集まる洗練されたエリアだ。当然ながら、このマーケットにも、お洒落な人たちが引き寄せられるかのように集まる。レンガや骨組みがむき出しのまま残った空間は、そのものが一つの芸術作品のようであるが、ここを訪れる人たちもまた、まるでその作品の一部かのごとく、決まっている。
アメリカはアジアやヨーロッパに比べ歴史が浅い、などと揶揄されることもある。むしろ、だからなのかもしれない。ニューヨークの人たちが古いモノを慈しみ、軽やかに楽しむ心は、なかなかのものである。
【ニューヨーク=宮崎紀秀】