1 ビデオカメラが捉えた飢える兵士 II
[2]部隊の食事を「おぞましい」と告白する軍官学校生 [平安北道]上
取材:キム・ドンチョル 整理/解説:石丸次郎
一一年三月、平安北道のある街で、キム・ドンチョル記者は街で二人組の兵士を見つけて、密かにビデオカメラを回しながら声をかけた。兵士たちは部隊の食事を「おぞましい」と表現し、一般住民であるキム・ドンチョルに支援を求める。何か仕事を手伝うので、食べ物を分けて欲しいというのである。録音された音声は、当事者である兵士が赤裸々に軍部隊の窮乏ぶりを語ったものだけに、資料としてきわめて強い証拠力がある。
以下、キム・ドンチョル記者と二人の兵士のやり取りを再現してみよう。なお、二人の兵士は、下士官に昇進するための「軍官学校」に在籍している。軍官学校には入隊して数年を経た兵士が所属部隊から転入するのだが、二人は、この時は何かの理由で学校からどこかの部隊に出向いているようであった。年齢は数え年だ。
キム:君たち、二人とも今日時間あるかい?
兵士1:今日ですか?
キム:水道工事をしようと思って(いるので、働かないか?)。
兵士1:(仕事は)多いですか?
キム:そんなには多くないよ。歳はいくつだい?
兵士1:二六です。
キム:どこの部隊なの?
兵士1:××× から来ました。
キム:あそこの軍官学校かい?
兵士1:ええ。
キム:なんかずいぶん痩せてるなあ。大変なの?
兵士1:しんどいです。
キム:栄養失調になってるのも多いんじゃないのかい?
兵士1:皆、弱っていますね。
キム:皆そうなの?
キム:×× 分隊は皆そうです。
キム:何年度に軍官学校に入ったの?
兵士1:〇四年度に入学しました。
キム:(もう一人兵士に)君は何歳?
兵士2:二九です。
キム:君はまだ大丈夫そうだね。(笑う。続けて兵士1に向かって) 君はもう除隊する時期だよね、二六なら。
兵士1:まだです。
キム:学校(大学)を卒業して入隊したんじゃないの?
兵士1:違います。
キム:そのまま(「中学卒業後直ちに」の意)入隊したのかい?
兵士1:ええ。
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