映像を見ると、この「突撃隊員」と若い兵士たちに覇気がない。空腹のせいか座り込んだり、横になっている者もいる。学生たちは、アパート建設のために大学の授業が中断されて現場に動員されているが、映像ではおしゃべりに余念がないように見えた(注1)。
建設作業に従事する「突撃隊員」の待遇は極めて劣悪なようである。脱北者のリ・サンボン氏は息子が〇二〜〇三年に、やはり平壌の都市整備事業に「突撃隊員」として動員されたため、差し入れを持って何度か現場を訪れた経験がある。工事の中心労働力である「突撃隊」の待遇について次のように述べる。
「『突撃隊員』は動員期間中はずっと天幕を張った簡易宿所で集団生活する。毎朝革命歌謡を歌って『新聞読報』という労働新聞の読み合わせをやるそうだ。さらに『金正日将軍のお言葉によって、君らは首都平壌を立派に建設する最前線で闘う光栄に浴した』というような思想教育を週一回二時間ほど受ける。
「息子が言うには、『突撃隊員』はどこの作業場でも、とにかく寝ても覚めても食べることばかり考えているという。供されるのは毎日一食トウモロコシ一八〇グラムとおかずは菜っ葉の塩漬け。肉のスープが出たのは金日成と金正日の誕生日だけだそうだ。だから親が金や食料を送ってやらないとすぐに痩せてしまう。
「テント暮らしでは盗難事故や諍いもしょっちゅうで、付近の民家に盗みに入って袋叩きに遭うようなこともあるし、女性隊員への性的暴行事件も珍しくなく、幹部たちが食べ物を見返りに性行為を求めるようなことが当たり前だったと言っていた。
「事故も多い。作業中に感電したり壁が崩れて怪我するというのは茶飯事。作業中に落下したり、古い建物を壊す際に発破作業で吹き飛ばされたりして死ぬ事故も発生したそうだ」。
(つづく)
注1 朝鮮総連の機関紙『朝鮮新報』でも、軍人建設者と大学生が投入されていることに触れている。
「各大学では一部授業もストップし、2011年度の卒業式を遅らせる措置も取られている。金日成総合大学で学ぶ知人の息子は、毎日建設現場に赴き汗を流している。」(同紙電子版一一年一〇月二六日付)