◆「いつ将軍様と結婚した?」過度な関心でデマ発生憂慮か
(本誌特約=「デイリーNK」カン・ミジン記者)
昨年北朝鮮で幹部用に制作されたとされる「『高ヨンヒ』記録映画」が、当局によって回収され始めたと、北朝鮮内部消息筋が8日伝えた。
金正恩の生母に対する偶像化作業の一環で試験的に制作されたこの映画が、住民の間でむやみに拡散し高ヨンヒ氏に関するデマが発生することを懸念しての処置と思われる。
※お断り 金正恩氏の実母の名前を訂正します。これまで「高英姫」と表記してきましたが、訪朝した藤本健二氏が訪れた平壌の墓の碑銘が고영희ではなく 고용희であったなどのいくつかの情報から、「英」を使うことは考えられず、「高ヨンヒ」と訂正して表記します。(2016年7月7日)
平壌の消息筋は同日のデイリーNKとの通話で、「金正恩同志の母親(高ヨンヒ)の記録映画がUSBを介し一般住民にまで広まり、国家は大々的な回収作業に乗り出した。幹部たちにまず配布し映画の内容を評価させてから、一般住民に対する政治教養対策を立てる計画だったが、すでに一般住民に同映画に対する噂が広まってしまい、仕方なく更なる拡散を防ぐために回収に乗り出したのでは」と説明した。
「偉大なる先軍朝鮮の母」という題名のこの映画は90分の長さで、労働党宣伝扇動部講演課が主管して、昨年の下半期に制作されたとこの消息筋は説明。金正恩の成長と指導者訓練過程における高ヨンヒ氏の役割を描写した内容が中心で、高ヨンヒ氏が生前に金正日の軍部隊訪問に同行しては軍人たちの苦労話に耳を傾けたり、除隊後の入党保証を受け持つなど、ファーストレディーの役目を果たす姿の場面もあるという。
ところがこの映画が一般住民に広まるなかで、「いつ将軍様(金正日)と結婚したんだ?」「故郷や家族は?」などと、高ヨンヒ氏個人に対する関心が高まった。その結果、北朝鮮当局が回収に乗り出したというわけである。
高ヨンヒ氏の本名は高ヨンヒで、万寿台芸術団の踊り子として活躍中、故金正日氏の三番目の妻として選ばれた。一部の北朝鮮住民の間では「令夫人」と呼ばれるなど、非公式の場では事実上北朝鮮のファーストレディの役目を果たしていたとされる。2004年乳がんで死亡した。
しかし高ヨンヒ氏は韓国出身(済州島)の在日同胞二世であり、金正日氏と公式的に結婚式を挙げていないなどの理由で、その間、金氏一族に対する偶像化作業には登場してこなかった。
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