3−Ⅰ 平壌10万戸住宅建設現場を行く[3]
3−Ⅰ 平壌10万戸住宅建設現場を行く[3]
取材:ク・グァンホ 整理・解説:石丸次郎
※この項の写真は二〇一一年八〜九月に平壌市の大同江(テドンガン)区域で撮影された。
◆事故多発、電力難でエレベーターも動かない
北朝鮮には独特のブロック工法というのがある。壁や床、天井に使う大きなコンクリートブロックを工場で作り、それを現場で組み立てる(前々回記事の写真を参照のこと)。小さいブロックは作業場でセメントを固めて日干しして作る。人海戦術でブロックを組み立てていくこのやり方は、六〇年代から続く「伝統」のようになっている。この北朝鮮式建設工法は、確かに工事は早いが、様々問題があるといわれている。
前出のリ・サンボン氏は平壌に居住経験があり、建設企業に勤務していた。北朝鮮のアパート建設工事の実情についても詳しい。次のように語る。
「『突撃隊員』や学生などの素人が作業するから、完工しても壁がはがれたり水漏れがしたりというのは当たり前。おまけに『突撃隊』や軍隊の幹部がセメントや鉄筋などの資材を横流しして売り払うから建物の強度が不足する。倒壊事故も少なくない。
九八年の四月だったと思うが、平壌市の統一(トンイル)通りに建ったばかりの八階建て『模範労働者アパート』が完全崩壊して、入居したばかりの六〇数人が圧死する事故があった。冬季の作業でコンクリートが乾く前に凍結してしまったのに、そのまま突貫工事を続けたため、春になって温度が上がって水分が溶け出すとたちまち倒壊してしまった。事故の数日後に現場に行ったが、アパートは跡形もなく瓦礫の山になっていた」。
林立する高層アパート群は、「革命の首都」平壌を現代都市として演出・宣伝するのに大層に役立っているが、実際に住むと不便が多いのだという。
「七階建て以上の高層アパートには、一応エレベーターを設置することになっているが、今の北朝鮮は電力難が極めて深刻。平壌でも高級幹部用アパート以外では、エレベーターはほとんど動かない」。
と、ク・グァンホ記者は言う。
またリ・サンボン氏は平壌のアパート暮らしの経験を次のように振り返った。
「光復(クァンボク)通りにある保衛部(情報機関)アパートに長くいたことがあるが、そこは四二階なのにエレベーターが動かない。上り下りが毎日どれだけ大変だったか。高層階に住む年寄りは外出もできないのだ。
さらに深刻なのは水。電力難でポンプが動かず水道が出ないアパートがほとんどだ。そのため、滑車を使ってバケツの水を窓から吊り上げたり、『交差給水』といって時間ごとに水道を使用する階を交代したりする。アパート街には毎朝リヤカーにポリタンクを積んで水を売りに来ていた。糞尿の処理も毎日大変だ」。
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