完全に廃墟となった建物が撤去されないまま残されている。あまりにも危険なため、建物の下の歩道に入れないよう柵がされている。(2012年2月下旬。ハバナ市 景山佳代子撮影)

 

◆景山佳代子のフォトコラム

ハバナ市街を散策するときは、頭上にも気を付けないといけない。
初日の散歩を終え、知り合ったキューバ人に「歩道を歩くときは、犬のフンに気を付けないといけないね」と話したら、彼は「私は、歩道は危ないから歩かない」という。
キューバの大通り沿いの歩道は、建物二階のバルコニーがちょうどアーケードの屋根のようになっていて、強い陽射しが遮られて歩きやすい。犬のフンが落ちているくらいでは、この快適さを捨て、車道沿いの熱線が降り注ぐような場所を歩こうなどと思えない。
不思議に思う私に、彼はこう続けた。「バルコニーが落ちてくる。つい先日も、それで4人ほど病院に運ばれた。君も歩道を歩くなら、上を見て注意しないといけない」

風雨にさらされ朽ちていくアパートの窓枠に、草木が生えている。廃墟には、人間がつくったものが、ゆっくりと土に還っていく時間が日々、刻み込まれているように思う。(2012年2月下旬 ハバナ市街 景山佳代子撮影)

 

バルコニーが落ちてくる?
言われてみれば、散歩途中にも、天井部分が崩落し、二階の窓部分から部屋ではなく青空が見渡せてしまう建物をいくつもみかけた。
革命から半世紀を過ぎ、建物の老朽化が激しいのだが、補修費用がないため、修理されないまま放置されているというのだ。(景山佳代子)
(つづく)
※戦後日本を「風俗」という視点から考察してきた景山佳代子氏(社会学者)が、2012年2月下旬~3月下旬キューバを歩いた1か月を、生活・風俗に着目して写真でリポートしていきます。

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