強制移住させられた人びとが暮らす人口3万人のシバ・シェクイドル。県の予算が十分に割り当てられず、村に診療所はひとつだけで医師はいない。診療所では100人をこえる患者が診察を待っていたが、対応していたのは薬剤師だった。 (2012年7月 撮影:玉本英子・アジアプレス)

 

強制移住させられた7町と40村から形成されたナヒア・アル・シマル行政区の市長、ナイフ・サイド・カスム氏(44)は「キルクーク県でも同じく強制移住がおこなわれたが、ニナワ県の場合は移住民の帰還プログラムがない。憲法に明記されている住民投票の実施で、北部のクルド自治地域への編入を目指すしかない」と語る。

「次にあなたが来たときは、昔のような緑豊かな村にしてみせますよ」 スケニ村のバキルさんは別れ際そう言って、いつまでも手をふってくれた。
【イラク北西部ニナワ県 玉本英子】

[注1]イラクのヤズディ教徒
ゾロアスター教の流れをくむといわれるが、他の宗教の影響も受けている。イラク、イラン、トルコなどにまたがる地域に暮らし、イラク国内にはおよそ60万人が暮らし、クルド系が多い。フセイン政権下ではクルド系として迫害され、イラク戦争後はイスラム武装勢力から「邪教」として狙われてきた。2007年8月に起きたヤズディ教徒を標的とした爆弾事件では死者は375人にのぼった。

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