I 急速に普及する携帯電話(2)
石丸次郎/リ・ジンス
携帯電話の入手方法
まず携帯電話(手電話)を入手する手続きについてみてみよう。恵山(ヘサン)市に住む取材協力者のチェ・ギョンオク氏と、平壌に住むク・グァンホ記 者の調査をまとめたのだが、若干手順に異なる部分がある。首都と朝中国境都市の条件の違いなのか、平壌の方が普及が圧倒的に進んでいるという事情による違 いなのか、現状ではわからない部分がある。
[1] 購入申請
チェ・ギョンオク氏は、
「申請用紙を入手するのにまず金がかかる。『逓信管理局』もしくは『電信電話局』で、職員に中国元一〇〇元(約一二五〇円)を支払って入手する。携帯電話が出回り始めたばかりの頃は三〇〇元だった。一方、党幹部などはタダで申請用紙をもらっている」
と説明する。二つの局はいずれも恵山市の行政委員会の下にある。支払いが中国元であり、しかもかなり高価であることから、これは役人による小遣い稼ぎの賄賂性の「手数料」である可能性が高いと思われる。
平壌のク・グァンホ記者からは申請用紙入手に金がかかるという言及はなかったが、
「区域の携帯電話を取り扱うのは逓信所。申請書は逓信所内部にコネがないと入手が難しい」
と言うので、平壌でも金が必要なのかもしれない。
ちなみに両人とも申請用紙を入手してその写真を提供してくれたが、様式は同一であった(写真を参照のこと)。
次に申請であるが、警察と役所の承認が必要だ。チェ・ギョンオク氏によれば、勤めに出ている労働者の場合は、勤務先(企業所や機関)の承認印をも らった後、所轄の保安署(警察)の印と担当保安員(警察官)の署名をもらう。「扶養」(職場を持たない主婦)の場合は申請書に勤務先の代わりに洞事務長 (役場の長)の印と署名をもらう必要があるという。ク・グァンホ記者によれば、平壌では外国人と「扶養」は携帯電話の購入申請ができないという(「扶養」 が地方で申請可能で、平壌で不可能な理由はないと思われるので、ク記者の考え違いかもしれない)。
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