中国当局が「和坪鉄道」建設に踏み切ったのには、可採埋蔵量が20億トンとも言われる茂山鉱山から、鉄鉱石輸入の拡大を目論んでのことだ。国内産業が極めて低調なため外貨獲得を地下資源の輸出に頼る他ない北朝鮮政府と、高度経済成長による需要増で莫大な量の鉄鉱石を世界中から輸入している中国の利害は一致している。中国当局が発表する貿易統計からも、石炭や鉄鉱石の輸出拡大傾向は明らかだ。
しかしここ南坪鎮では、中国側は輸入拡大につながる鉄道工事の完成を急いでいない。工事費の横領という問題があったとしても、必要ならば完工を急ぐはずである。このことから、茂山鉱山からの鉄鉱石輸出をめぐっては、「内需優先」など、何らかの政策変化が北朝鮮側にあった可能性も考えられる。