反響を呼んでいる映画「かぞくのくに」のヤン監督との対談第9弾。話はヤン監督の学生時代に。総連組織に自分の進路決定を委ねる「組織委託」だけは、ヤン監督にとってできないことだった。(聞き手 石丸次郎/アジアプレス)

ヤン・ヨンヒ監督 (撮影ナム・ジョンハク/アジアプレス)
ヤン・ヨンヒ監督 (撮影ナム・ジョンハク/アジアプレス)

◆「首領様」の肖像画はブロマイド
石丸:家には肖像画がずっと掲げられてた?
ヤン:今もあります。

石丸:今もあるの?すごいなあ。
ヤン:(実家に戻った)昨日も、肖像画の下で寝てるんです私(笑)。もう実家帰ってきたらうなされそうやわ。でも、うちのオモニ(=お母さん)にとっては、肖像画はヨン様のブロマイドみたいなもんだろうと思ってます。この人なしでは生きていけません、息子らも皆この人に任せてるんでということなんでしょう。韓流スターのポスターみたいなものだと思うように努めてます(笑)。

石丸:なるほど、特に「首領様」(金日成)はそうなんでしょうね。
ヤン:そりゃあ金日成と金正日では違いますよ。レベルが違う。「男前やわ、首領様」って言うもん。金正日さんになった時は、「なんでお父さんほど男前ちゃうんやろ」って言ってました。正恩の肖像画は・・・・・・、さすがにオモニも掛けないでしょ。

◆「組織委託」を強要され続けた学生時代
石丸:朝鮮学校時代、ヤンさん自身は、指導者や祖国北朝鮮をどう思っていましたか?
ヤン:どう思うかっていうより、国、(総連)組織に対して、そして指導者に対して「こう考えなければなりません」ということばっかりでした。同級生とは要求されるレベルが違ったんですよね。高校生の時、同級生は朝鮮大学校に行きたいって行ったら褒められるのに、私は「アカン。組織に出なさい」と言われる。つまり、「組織委託しろ。組織に進路を任せますと言え」と言われるわけです。それを言うまで、先生たちをたらい回しにされたんですよ。授業なんか出んでええって。
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