ク:「龍城」はいくらで売ってるんですか?
販売員:「龍城」は三八ウォン。マッチは販売していませんよ。
棚には他の銘柄のタバコも並んでいる。「平壌 八〇〇」「東海 一七〇〇」「錦繍江山 一一〇〇」など全部国産のようだ。「マッチ 一五」の値札 も。「龍城」だけが国定価格で販売されているので、お金がない老人たちが買いに来ているのだ。値段の高いタバコは国定ではなく、いわゆる闇価格(市場価格 の意)。それをわざわざ百貨店に買いに来る人はまずいない。ジャンマダンで買えるからだ。タバコ売場の向かいではライターや懐中電灯、乾電池などが陳列さ れているが、客は誰もおらず販売している気配はない。
次に食器売場に。スプーンや箸など置いているが、ここも長蛇の列ができている。押し合いへしあい、口論している。おばあさんが横入りして男に怒鳴られる。保安員(警官)が「ちゃんと並べ」と統制している。
「釜 四六〇」「鍋 五一〇」「フォーク:二四〇〇」、「箸 一四〇〇」などとあるが、列に並んで売ってもらえるのは金属製のしゃもじだけだという。値段は九七ウォンと安いのは安いのだが......。
テレビや洗濯機などの家電製品売場に移動。「アリラン」という商標の二層式の洗濯機のふたを開けて見る女性もいる。奥にはブラウン管テレビ、前方に は液晶テレビが置いてあり、人が集まって眺めている。テレビには「ハナ」という商標と三七インチという表示。これは中国製に朝鮮の商標をつけただけのもの だと思う。画面から「将軍様のご恩で幸せが、幸せが実った街......」という歌が聞こえる。他にも、冷蔵庫などの家電製品、家具などが陳列されている が、どれも買おうとする人はいない。並べてあるだけだ。
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