高校生になったヤンさんは兄に会うため初めて朝鮮を訪れる。だが、当局は兄たちとの接触を制限して自由に会わせてくれない。映画「かぞくのくに」のヤン監督へのロングインタビュー第四弾。(聞き手 石丸次郎/アジアプレス)
◆兄に会いに平壌へ
石丸:ヤンさんが、最初に訪問団で北朝鮮に行ったのは?
ヤン:高校2年のとき。81年か82年でした。オッパ(お兄さん)たちと会うのは11年ぶりでした。
石丸:在日の祖国訪問団が出来て間がない頃ですね。
ヤン:そうです。今は朝鮮高校生や朝鮮大学生は修学旅行で全員が行きますけど、当時はまだ、選ばれた子だけが学生代表団で行っていた時代です。さすが民族教育ですよね、ずっと恋しい祖国っていうふうに教えられて、ずっと学校で教科書だけで習ってきたウリナラ(わが国)に直接行けるというので、みんなテンションが上がるわけです。
それで、映画見せて、文化公演見せて、いい待遇の中で「君も(朝鮮)革命のために」なんて言われたら、なんか馬鹿正直な朝鮮学校の生徒はみんな、「組織のために頑張ります!」となるわけです。そうすると朝鮮学校行く子も増えるし、組織に出る子も増えるということだと思うんですよね。あたしはすごく醒めてた・・・・・・初めて行ったときから。
石丸:それで、北朝鮮に行ってお兄さんには会えたんですか?
ヤン:はい。着いたその日が、一番下のオッパの結婚式だったんです。まあ私が来るっていうので、日にちを合わせてくれたんですね。アボジ(お父さん)は先に行ってました。行動別なんで、結婚式だけ一緒でしたけども。
石丸:11年ぶりのお兄さんはどうでしたか?
ヤン:とにかく面会時間が短いわけですよ。もちろん家には行けないし。もう11年ぶりであろうが関係ない。
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