石丸:それは向こうの人?それとも帰国者?
ヤン:向こうの人です。うちの家に来た初日に、うちのオモニ(お母さん)はお金渡してました(笑)。「ビールぐらい飲みたいやろ、あの人も」ってオモニが言うから、私は「来た途端に渡すんかいな」って嫌味をいったんですよ。そしたらオモニが「あの人、どないすんの?北朝鮮のお金持って来てもしゃあないやんか。かわいそうやん、コーヒーも飲まれへんかったら」って言うんですよ。もう、「アイゴー、アイゴー」やわ、ほんまに。「北朝鮮の人全員の面倒見たらよろしいやん」って言うたもん、私。そこまで気配りせんでもねえ。まあ、息子のためなんでしょうけどね。
石丸:それで、日本滞在の当初の予定は3ヶ月。
ヤン:はい3ヶ月。で、アボジ(お父さん)もオモニもね、半年に伸ばせるだろうと疑ってなかったんです。だっていくらなんでも5年も10年も頼んで頼んでやっと許可が下りた病気治療ですから、まさか治さないうちに帰って来いとは言わないだろう、半年は大丈夫だろうと言ってました。
石丸:ところが2週間で帰って来いとなった。他の人も?
ヤン:はい。聞いたら外国に出てるすべての人に帰国命令が出たっていうんですよ。私その時、何かあったんかな、クーデターみたいなこととか、要人が海外に出てて亡命したとか。でも、ニュース見てたんですけど、そういうことは何にもなかったんです。まあ、中のことは分からないですけど。で、全員帰りました。なんやねん、冷やかしかみたいなね・・・・・・。
石丸:ほんまやね。
ヤン:ちゃんと病気治させてあげようという気がないんだったら日本に来させるな、っていう話じゃないですか。
(続く) 次へ>>
※8/4から封切りされたヤン・ヨンヒ監督作品「かぞくのくに」の上映情報です。
http://kazokunokuni.com/theaters/index.php
「北朝鮮と私、私の家族」 ヤン・ヨンヒ監督インタビュー 一覧