映画「かぞくのくに」のヤン監督との対談第7弾。病気治療のためになんとか訪日が許された兄は、妹に「人に会って報告する仕事をして欲しい」と頼む。「スパイ行為」を求められたヤン監督は・・・・・・。(聞き手 石丸次郎/アジアプレス)
◆当局の要請
石丸:映画の中で、お兄さんが「スパイをやってみてくれないか」と、妹に頼む場面があります。実際にはどんな言い方をしたんですか?
ヤン:あんな言い方です。「人に会って、報告する仕事だけやねんけど」みたいな。
石丸:報告する・・・・・・。
ヤン:本当にあんな言い方でした。オッパ(お兄ちゃん)も、とりあえず言うだけは言わないとって感じでした。絶対にイエスをゲットして来い、ではなかったと思います、たぶん。
石丸:平壌から日本に発つ時に当局から言われたので、とりあえず履行だけはしましたという感じだったのかな?
ヤン:もしそこで私がね、オッパのためだと思ってOKでもしたら万歳じゃないですか。でも、私は映画にあった、ああいう感じでビシッと断って・・・・・・。
石丸:誰かを監視してほしいという内容だったんですか?
ヤン:いや、誰とは言ってない。指定する人と会って、どんな話をしたかを報告する、ただそれだけでした。その時に思ったのが、「一回ならええよ」なんて、もし私が言った日には、自分の人生はえらいことになると。その予感はしたので、これはもうオッパと大喧嘩になろうが、とにかくNOって言い切らなあかんていうのだけは自分でははっきりしてました。オッパが向こうで罰せられても、私は自分の人生守らなあかんって思ったし。う~ん、でも申し訳なくもあり。だから、「オッパ大丈夫なん?」って何回も聞きました。オッパは、(頼むからやってくれとは)しつこく言わなかったんですよ、ありがたいことに。
次のページ:互いの心の傷に...