震災がれきの広域処理をめぐって現在も議論が続いている。なぜ廃棄物由来の放射能汚染の拡散を住民が懸念するのか。それには福島第一原発事 故後、ゴミ焼却施設で何が起こっていたのかを知ることが必要である。ここに紹介するのは、焼却施設における汚染が明らかになり始めた2011年8月の千葉 県柏市における状況である。全国に先駆けて放射性物質の扱いに長けた専門業者に委託した同市で何が起こっていたのか。井部正之が現地で取材した。(編集 部)
溶融飛灰から高い放射線量が
袋から1mの距離で毎時1.2マイクロシーベルト、50cmで毎時3.41マイクロシーベルトだった。試みに袋の上に測定器を置いてみると、上限の 毎時9.99マイクロシーベルトを振り切った。設定を変えて計り直すと、毎時12マイクロシーベルトで止まった。都内の屋外ではせいぜい毎時0.1マイク ロシーベルト程度だから通常の100倍を超える。住民の避難措置がとられた福島県飯舘村並みの測定値に思わず息をのんだ。
溶融飛灰などの搬出口のほうに回ると、ドラム缶に詰めた飛灰固化物を移動させるところだった。ふと、全開にされた施設のシャッターの下に目をやると、焦げ 茶色の溶融飛灰固化物がブルーシートの上に転がっている上を台車で行き来しているではないか。やがて作業員は竹ぼうきで掃き始めた。
「これ、溶融飛灰(固化物)ですよね」と確認すると折原所長は、「そうです」と認めた。
市の発表によれば、溶融飛灰固化物には1キロあたり6万800~7万800ベクレルの放射性セシウムが含まれている。これがどのような汚染レベルなのか。神戸大学大学院海事科学研究科教授の山内知也氏が驚きを込めて言う。
「神戸で土を測ってもせいぜい(1キロあたり)数ベクレルですよ。100ベクレルなんてめったにありません。1キロあたり1万ベクレルあると放射性物質と して扱わなくてはならないのですが、私らでもそんな放射線が高いものはめったに扱わない。7万なんてめちゃくちゃ高いですよ」
つまり通常の土壌の数千倍から数万倍という高濃度の放射性廃棄物なのである。南部クリーンセンターの汚染は福島県内を除けば下水道施設、家庭ゴミ処理施設を問わず、現時点(2011年8月)でもっとも高い。