震災がれきの広域処理をめぐって現在も議論が続いている。なぜ廃棄物由来の放射能汚染の拡散を住民が懸念するのか。それには福島第一原発事 故後、ゴミ焼却施設で何が起こっていたのかを知ることが必要である。ここに紹介するのは、焼却施設における汚染が明らかになり始めた2011年8月の千葉 県柏市における状況である。全国に先駆けて放射性物質の扱いに長けた専門業者に委託した同市で何が起こっていたのか。井部正之が現地で取材した。(編集 部)
そもそも飛灰や溶融飛灰はダイオキシンのみならず、重金属も大量に含む有害物質で、その取り扱いには細心の注意を要する。ところが、これまで日本の下水道 施設やゴミ焼却施設では密閉性など気にせずシャッターがあるだけの建屋の床に飛灰を直に落とし、搬出時にもトラックの荷台にクレーンで放り、荷台にシート を掛けただけで移動するなど、有害物質とは思えない扱いをしてきた。
環境省廃棄物対策課によれば、「廃棄物処理法ではばいじん(飛灰)または焼却灰が飛散流出しない構造とするよう求めています。負圧にしたり、湿潤したり、二重三重で飛散流出対策が採られている」という。
だが、実際に柏市ではそうした飛散流出対策が十分に採られているとは言い難い。そうした構造がどのような場合に必要なのか「明確な基準がないのは確 か」と同省は認める通り、そこに抜け穴がある。実際に灰出し設備のところで「二重三重の飛散流出防止対策」が講じられている施設などほとんどないのだ。今 回のような施設外への流出も〝人災〟との側面が見え隠れする。
私は柏市に正式名アポイントを取って取材に訪れた。その私の目前で、しかも原発内作業をする専門業者が、放射性廃棄物をずさんに扱っていたのである。同じような、あるいはもっとひどい事例が各地で起こっていてもなんら不思議はない。
しかも今回のような施設からの直接流出以外にも排ガス処理は放射性物質を100%取り除けるわけではないため、一部が施設外にばらまかれる。国も柏 市も「未検出」を理由に「周辺への影響はない」というが、「採取時間も測定時間も圧倒的に短すぎる」(京都大学原子炉実験所助教・小出裕章氏)との批判も ある。
前出・山内氏はこう指摘する。
「下水汚泥やゴミの焼却施設は濃度は低くても量が多い。濃度が低くても量が多くなってしまえば汚染や被曝はそれだけ多くなります。総量の規制を考えるべきではないか」
〝二次汚染〟による被害を出さないためには最大限の対策が必要のはずだが、いま進められているのは現状を追認するための〝お墨付き〟ばかり。これでは〝想定外〟の被害者が出ることになるのではとの危惧が拭えない。