◆犯人逮捕で公然化 当局は厳罰で臨む
特集[2012黄海道飢饉]記事一覧
(3) 黄海道の民衆の証言 下(リ・ジンス 石丸次郎)
(承前)
今回の取材でとりわけ衝撃を受けたのが、人肉事件に関する証言が何度も飛び出したことだった。取材した黄海道住民全員が、人肉を食したり流通させた事件が周りで起こったと語ったのだ。
「私の村では、5月に子ども2人を殺して食べようとした父親が銃殺になりました。妻が商売で留守の間に長女に手を出したのですが、息子に目撃されたため、一緒に殺したのです。
家に戻ってきた妻に『肉がある』と勧めたのですが、子どもの姿が見えないことをいぶかしんだ母親が、翌日保安部(警察)に通報すると、軒下から子どもたちの遺体の一部が見つかったそうです」(リム氏)
「死んだ孫の墓を掘り起こして、その死体を食べた祖父が捕まった事件があった」(ク記者)
一方、北朝鮮当局も人肉を食したり売ったりする行為に対しては、厳罰を持って臨んでいるようだ。
「海州(ヘジュ、黄海南道最大の都市)では5月に、11人を殺しその肉を豚肉として流通させた犯人が銃殺された」(リム氏)
これ以外にも、文字で表現することを憚られるような証言をいくつも耳にした。このようなおぞましい人肉事件の噂が広まったのは、警察沙汰になって事件が公然化したためである。また、人肉事件は去年までまったく聞かなかったと、証言者たちは口を揃えた。(続く)
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