◆家族を犠牲にしてでも
ヤン:『ディア・ピョンヤン』作った時、家族に迷惑かからないようにするにはどうしたらいいかと思いながら構成考えたり、言葉選んでナレーション作ったりしましたけど、でも正直な部分も出したい。実際には、いくら気を付けても、家族の安全保証に「絶対」はないじゃないですか。私がいきなり、ジョンウン様万々歳の映画でも作らない限りは、これ払拭できないと思うんですよ。でも、作りたいっていうか、なんか吐き出したいっていうか、そっちの方が勝っちゃってるんですよね。
石丸:だんだん、家族の心配より映像制作者として表現したい欲求が強くなってきたわけだ。
ヤン:そう。だから、昔はとてもじゃないけど、「兄貴たちに迷惑がかからないように考慮して作ってます」としか言えなかったけど、最近は変わりました。申し訳ないけど、家族に迷惑かかっても作ります。オッパ(=お兄ちゃん)たちが収容所に入れられますけど、どないしますか?って言われたとしても、やっぱり、私、やめますって言わないと思う。だってそこでやめたら、オモニらと一緒になるんですよ。もうええやんそれは、そんな時代は終わりにしようって本当に言いたい。そのためには、まだ何人犠牲になるか分からないけど。
石丸:自分のやりたいこと、表現したいことを我慢させられのは、もう堪忍してということですね、たとえ軋轢が起こったとしても。
ヤン:今実際、犠牲になってます。うちのオモニ、やっぱりすごい板ばさみになってる。総連の人から冷たくされてるし。うちのアボジ(=お父さん)の葬式のときにね、中央の教育会からは弔電来たけど、総連の中央から弔電来なかった。オモニいまだに怒ってますけどね。娘が問題児なのは分かるけど、それ差し引いても評価されてもええぐらい、うちのアボジは実績残したはずなんです。大阪の朝鮮学校の助成金すごく増やしましたし。
(続く)
※8/4から封切りされたヤン・ヨンヒ監督作品「かぞくのくに」の上映情報です。
http://kazokunokuni.com/theaters/index.php
「北朝鮮と私、私の家族」 ヤン・ヨンヒ監督インタビュー 一覧