記者会見で抗議文を読み上げる安世鴻(アン・セホン)さん

 

◆「諸般の事情で」とニコン
写真機メーカー・ニコンが運営する展示場「大阪ニコンサロン」で開催が決まっていた写真展が中止されたことに対して、写真家の安世鴻(アン・セホン)さんが5日、大阪市庁内で抗議の記者会見を開いた。
安さんは、「ニコンが写真家の展示の場を奪うのは表現の自由に対する抑圧であり、写真家を萎縮させるものです。正式な写真展の開催を求めたい」と述べた。

安さんは中国に残留する朝鮮人元日本軍慰安婦を2005年から取材。「重重 中国に残された朝鮮人元日本軍『慰安婦』の女性たち」と題する写真展示を昨年12月にニコンに申請し、選考委員会で作品が高い評価を得て、東京(6-7月)と大阪(9月)のニコンサロンで正式に開催が決まっていた。

ところが、今年5月にニコンは突然、写真展の中止とお詫びを安さんに通告。理由は「諸般の事情を総合的に考慮」だった。
これに対して安さんは、写真展開催を求め東京地裁に仮処分を申し立てた。東京地裁はこれを認め、ニコンに写真展示場を使用させることを命じ、予定されていた期間に「新宿ニコンサロン」で展示が実現した。しかし、ニコンは「大阪ニコンサロン」での同じ写真展の開催を拒否していた。

5日、大阪市役所で行われた記者会見。集まった報道関係者から多くの質問が寄せられた。

 

記者会見の後、安さんは「大阪ニコンサロン」を訪れ、開催の取り消しを「表現の自由を侵す行為」と抗議。説明を求めたが、対応した森真次フォトカルチャー支援室長は「中止の理由は諸般の事情」とだけ述べ、「諸般の事情とは何か」との質問に対しそれ以上の説明を拒否した。

また、「写真展開催に反対する外部団体の抗議電話などに屈したのではないか」との質問に、村田和夫同支援室長代理は「抗議電話があったのは事実だが、中止の理由は『諸般の事情』としか言えない」と述べた。
抗議に訪れた安さんには、マスメディアが取材のため同行したが、ニコン側は取材を拒否した。
安さんは、ニコンによる写真展拒否に抗議するため、大阪市内の下記のギャラリーで展示会を催す。また表現の自由を考えるトークイベントも開く予定だ。(石丸次郎)

◆ピルゼンギャラリー(大阪市中央区心斎橋筋)
10月11(木)~16日(水)11:00~19:00(最終日17:00)入場無料
◆トークイベント「安世鴻写真展はなぜニコンサロンで開かれなかったのか」
大阪市立中央会館ホールにて10月13日(土)19:00~21:00
問い合わせは080-3208-2425

 

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