安倍氏は、200億円を「北朝鮮にとって2兆円ぐらいに感じる額」だと根拠なく勝手に解釈して、効果があると断じているが、拉致問題の解決にとって経済制裁発動が本当に有効なのかどうかについて、論理的な説明にはまったくなっていない。安倍氏が言った「大変な効果」などなかったことは、その後の事態膠着が如実に現している。

安倍氏は経済制裁発動の急先鋒として多くのメディアに登場して人気を博し、ついに06年9月に総理大臣の座を射止める。そして就任直後の10月、核実験を強行した北朝鮮に対して、国連の制裁決議とは別に日本独自の経済制裁を発動した。
その際に安倍氏は「拉致問題も制裁発動の理由のひとつ」と明言してしまったのである。

当時、拉致被害者家族と支援団体は「圧力をかけてでも解決を」と主張していた。解決を願う家族の思いは十分理解できる。だが家族は政治・外交のプロではない。その思いを引き取り、本当に解決に有効な外交政策を立案するのが政治家の役目のはずだ。

北朝鮮国内で撮影された横田めぐみさん
北朝鮮国内で撮影された横田めぐみさん

政治家は、経済制裁の必要性を主張するのであれば、その有効性を論理的に説明すべきであった。振り返ってみると、西村氏も石原氏も平沼氏も、そして安倍氏も、一見勇ましく振舞っただけである。
そこには、制裁で事態がさらに膠着した場合、「被害者や家族に対して負うべき責任がある」という自覚がなかったといわざるを得ない。
(一部敬称略)
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