北京を訪れる度に、巨大で現代的なビルに圧倒される。
中国といえば、「道路を埋め尽くす自転車の群れ」という印象がいまだに残っているからかもしれない。
しかし、そびえるビルの威圧感は、そんなかつての貧しい国のイメージを一刻も早く捨て去り、この国が世界第2位の経済大国になった事実を認めるよう、人々に強要しているかのようにも思える。
中華民族の中心地として誇りに満ちた北京には、天安門広場や故宮など、もともと大きな建造物が多い。新たに造られる建物に、大きさだけではなく奇抜さや斬新さが加わり始めたのは、2008年の北京オリンピックに向けて、国がまい進していた頃だった。
都市の景観は変わっても、人々の生活はそう大きく変わるものではない。素朴な北京っ子たちの頭上に、ピカピカの巨大建築がニョキニョキと建つ光景には、ちぐはぐさを感じずにはいられない。そのすっきりしない感覚は、共産主義を標榜する中国が、国を豊かにするために持ち出した、「社会主義市場経済」という言葉の座りの悪さと、限りなく近い。
【宮崎紀秀】