聞き手 石丸次郎(撮影 アジアプレス南正学)
聞き手 石丸次郎(撮影 アジアプレス南正学)


国民投票に向かう可能性

石丸:憲法を変える、新しい憲法を作ってみようというというのも一つの政策だし、断固守ろうというのも一つの政策ですが、今回の選挙の結果によっては、改憲に向けて大きく舵が取られる可能性がありますね。
湯浅:少なくとも、石原さんと安倍さんにとっては、改憲はトッププライオリティー(最優先事項)です。彼らにとってそれが今一番の課題ですから、確実に進めてくると思います。

私のシミュレーションはこうです。今の情勢分析では、今回の選挙で自民党は大勝しそうですから、維新を足せば3の2に達する可能性があります。そうしたら多分、年明けにかなりの規模の大型補正予算を組むでしょう。そうすれば、6月の4~6月期にGDPが年率3パーセントくらいに伸び、うまくいったと言って参院選に持ってゆく。それで賞味期限切れ前に勝てれば、憲法改正に向けた国会の条件はクリアーです。

彼らはまず、憲法改正手続きを定めた第96条の改正案を通そうとしています。自民党の「憲法改正草案」を見ると、「シングルイシュー(1つのテーマごとに国会に憲法改正原案を提出)」と書いてある。つまり、1条、9条、96条などをセットで改正しようとするのではなく、まず一つ、とにかく96条だけを先に通す。まずはハードルを下げようという発想です。

来年に参院選があって、2014年の通常国会で審議し、周知期間を経て、2015年には少なくとも96条改正のための国民投票が来る可能性があります。そのときに私たちは、議会が勝手にやったことだなどとはもう言えません。だって自分自身で賛否を投票するわけですから。そこでは私たちがどういうふうにそれを受け止めて考え、判断するのかということが問われます。

国民投票というのは、間接民主制と直接民主制が重なる、日本の国で一番大きな、また今の私たちの現状、民主主義のあり方が問われる、最も良い例だと思います。だから、今回の選挙が、そういうことが動き出す大きな選挙なんだということを含めて、よくシミュレーションした上で、今どこに投票すべきかを、有権者は考える必要があるように思います。
(おわり)
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湯浅 誠(ゆあさ まこと)
1969年生まれ。社会運動家。自立生活サポートセンター・もやい事務局長・反貧困ネットワーク事務局長。元内閣府参与(緊急雇用対策本部貧困・困窮者支援チーム事務局長、内閣官房震災ボランティア連携室長、内閣官房社会的包摂推進室長)。2008年末に東京・日比谷公園で行われたイベント、『年越し派遣村』の"村長"としても知られる。近著に「ヒーローを待っていても世界は変わらない」(朝日新聞出版)

 

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