◆収穫物を盗む軍人たち 農民は黙認

:今年、黄海道で飢饉が起きたのは、昨年の収穫の際、軍による度を越した収奪があったのが原因でした。今年は収穫物を軍が持っていくようなことがありましたか。
:まだ脱穀が全て終わっていない時期だったので、軍糧米を軍がどれだけ持っていって、その後の状況はこうだ、と説明することはできません。ですが、軍人が農場に盗みに入っているという話は聞きました。

:場所によっては軍の部隊が収穫をして、根こそぎ持っていく場合があるという話ですが、訪問した地域ではどうでしたか。
:そういった事はありませんでしたね。ですがもし、軍の部隊が集団で収穫する現場に農民が出くわしても、文句の一つも言えませんよ。それは、軍隊と協同農場との間で話がついているということですから。

:では、「盗みに入る」というのはどういう状況ですか。
:腹を空かせた兵士が、個人や数人でこっそり収穫物を盗んでいくんです。

:農民たちは黙っているんですか?こん棒などの武器を持って見張りをしているという話をよく聞きますが。
:目の前で盗まれたら小競り合いが起きるかもしれませんが、大抵は見えないところで盗みが行われるので、事後に「犬畜生め」とか「天罰でもくらえ」と悪態をつくくらいです。軍と農民のあいだで衝突が起きるということはありません。

:農民は軍のことを良く思っていないでしょう。
答:「強盗集団だ」と皆言ってますよ。それでも軍は強いので、面と向かって反抗はできません。農民は自分が食べる食糧だけ確保できればいいので、政治的にややこしくなるような行動はしませんから。

:盗んだ食糧を軍が市場で売るようなことは無いんですか。
:ありますよ。小遣い稼ぎのために売りにくるんです。盗んだものなので、値段も他よりも安いし、重さも適当に量りおまけまでくれます。彼らはそうやって手にした小銭で、市場で買い食いして空腹を凌ぐんです。

(参考写真)収穫後の畑で落穂拾いをする老人女性。北朝鮮では秋になるとよく見られる光景だ。2012年11月平安北道新義州(シニジュ)市郊外。平安北道在住のアジアプレス取材協力者が撮影。(アジアプレス)
(参考写真)収穫後の畑で落穂拾いをする老人女性。北朝鮮では秋になるとよく見られる光景だ。2012年11月平安北道新義州(シニジュ)市郊外。平安北道在住のアジアプレス取材協力者が撮影。(アジアプレス)

次のページへ ...

★新着記事