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石でできた平屋がひしめく街並みを、美しい思う。それはかつて北京の風情であった。
だが、実際にそこで生活する人たちに、センチメンタリズムは通用しない。経済成長に沸く中国は、古い街を破壊し、西側先進国の何処にでもあるような建物を建てることを選んだ。
そのことに心を痛めた人たちが、ある目論見を企てた。それは、「発展」という御旗を得て、破竹の勢いで進撃する大軍の中で、小さな反旗を翻したかのようにも見えた。
南鑼鼓巷という名の小さな通りで、朽ちかけた建物を修復し、小洒落た雑貨店やカフェを開いたのだ。
店は1つ、また1つと増えていった。はじめは、ここを訪れるのは、異国情緒を好む外国人が多かったと思う。しかし、今では、この通りは中国人の若者たちで埋め尽くされ、東京で言えば、原宿の竹下通りのような活況を見せている。
数年前、この南鑼鼓巷に集った人たちの目論見は、まんまと成功した。商売と融合させることで、街並みという文化を保存したのだ。
【宮崎紀秀】
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