太平洋戦争末期、1万5000人もの犠牲者を出した大阪大空襲の被害者や遺族ら23人が国に謝罪と計2億2000万円の損害賠償を求めた集団訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は1月16日、原告の請求を退けた一審・大阪地裁判決を支持し、原告側控訴を棄却した。
原告は、旧軍人・軍属には手厚い補償があり、引揚者や沖縄戦被害者も援護の対象となっているのに対し、民間の空襲被害者だけが置き去りになっているのは「法の下の平等を保障した憲法14条に反する」と主張していた。
坂本倫城(みちき)裁判長は判決理由で、「旧軍人は戦地において戦闘行為に参加するなど死傷の危険性の高い職務を国から命じられていた」として、「補償を受ける者と原告との差異は著しく不合理と言えず、憲法に違反しない」と述べた。
さらに、「国の存亡にかかわる非常事態にあっては、国民は全てが多かれ少なかれ、その生命、身体、財産の犠牲を耐え忍ぶことを余儀なくされていたのであって、これらの犠牲は、いずれも戦争犠牲ないし戦争損害として、国民の等しく受忍しなければならなかったところである」と、一審判決にはなかった「戦争損害受忍論」を引用。空襲被害者への補償がないことについても、国会に裁量の逸脱はないと結論づけた。
6歳のときに空襲で左足を奪われた原告代表世話人の安野輝子さん(73)は「非情な判決だ。戦争に巻き込んでおいて被害を受忍すべきと言われても納得できない」と語った。
原告側は最高裁に上告する方針。【矢野宏/新聞うずみ火】