大阪大空襲などの被災者や遺族が国に謝罪と損害賠償を求めた訴訟で、1審の大阪地裁に続いて訴えを棄却した大阪高裁判決を不服とし、原告側が1月29日、最高裁に上告した。
上告したのは控訴審時の原告23人のうち21人。原告は、旧軍人・軍属とその遺族には年間1兆円もの手厚い補償があり、引揚者や沖縄戦被害者も援護を受けているのに対し、民間の空襲被害者だけが救済されないのは法の下の平等を定めた憲法14条に違反していると主張している。
控訴審は2回の弁論しか開かれず、1月16日の高裁判決は原告側の棄却のみを言い渡し、判決理由も読み上げられることもなく、わずか1分足らずで閉廷した。
坂本倫城(みちき)裁判長は判決理由で「原告が差別されているとは言えない」として原告側の主張を認めなかったばかりか、「戦争被害は国民すべてが等しく受忍しなければならない」とする、いわゆる「戦争損害受忍論」を復活させた。
「受忍論」は、1972年に最高裁大法廷が表明し、87年の名古屋空襲訴訟の最高裁判決でも繰り返された政治論。違憲判断の余地を奪ってしまうとして、これまで厳しく批判されてきたため、大阪空襲訴訟の1審判決や東京大空襲訴訟の1審と控訴審判決でも言及することはなかった。だが、大阪高裁判決はこうした流れを無視し、26年ぶりに復活させたのだ。
原告団代表世話人の安野輝子さん(73)は「控訴審判決は非常で耐え難いものでした。孫や子の代に平和な時代を手渡すために、国には先の戦争の後始末をきちんとさせなければならないと思っています」と決意を語った。
【新聞うずみ火/矢野宏】